電音部、エリアを超えたコラボレーションが実現!──〈電音部 3rd LIVE -SOUL EVOLUTION-〉DAY 2
バンダイナムコエンターテインメントが仕掛ける本格的なダンスミュージックを中心とした、音楽原作のキャラクタープロジェクト〈電音部〉。そのイベント〈電音部 3rd LIVE -SOUL EVOLUTION-〉が立川ステージガーデンにて開催されました。今回は、6月25日(日) に開催されたDAY 2の模様をレポートでお届けします。
〈電音部〉の音源、続々配信中!
REPORT :〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉
取材&文 : 西田健
前回のライヴイベント〈電音部 2nd LIVE -BREAK DOWN-〉では、ヒール的な存在であるカブキエリアの出現により、ハラジュクエリアのひとりである桜乃美々兎の、いわゆる“闇堕ち”で終わるという衝撃展開を見せた電音部。あれから1年。電音部の物語は大きく動いた。カブキエリアは、あらゆるスポットで多くのファンを増やし、ハラジュクエリアは2023年3月5日に中野サンプラザにて開催された〈電音部 AREA MEETING -HARAJUKU-〉にて美々兎の心には再び青い炎が灯した。そして、今回の〈電音部 3rd LIVE -SOUL EVOLUTION-〉では、いったいどんなステージが見られるのか。ファンの表情は楽しみな部分もあり、不安な部分もあり、といったところだった。
開演前、客席の注意事項を伝える影ナレが流れる。その声は本日ライヴにはスケジュールに都合で欠席の犬吠埼紫杏役の長谷川玲奈と茅野ふたば役の堀越せなだった。離れていても心はひとつ、という思いを感じられるような声に多くのファンが奮い立つ。ちなみに、今回の公演は声出しが可能。電音部のナンバリングLIVEで声出しが解禁されるのははじめてのことなので、ファンの気合いもバッチリだった。
定刻、無数のレーザーに彩られた場内に、Yunomi謹製のOvertureが流れ出す。そして、そのまま電音部きってのキラーチューン、“Hyper Bass”へと繋がっていく。ステージに現れたのは、ハラジュクエリアより桜乃美々兎役の小坂井祐莉絵、水上雛役の大森日雅のふたり。容赦のない重低音が会場全体を支配し、そこにふたりのウィスパーヴォイスが重なる。ライヴは1曲目から、すでに爆発的な盛り上がりを見せていた。
“Hyper Bass”を終えると、美々兎役の小坂井祐莉絵はステージに残り、さらにアキバエリアより日高 零奈役の蔀 祐佳と、シブヤエリアから大賀 ルキア役の星川 サラが登場。そのまま星川のソロ曲“JUNGLE WAHHOI”を、ダンサーと共に披露すると、フロアは四方八方から聞いたこともないような動物の叫び声がこだまするジャングルへと変貌していた。
エリアを超えたコラボレーションに驚いていると、次はアキバエリアの蔀と東雲 和音役の天音 みほ、そしてシブヤエリア全員による“Let’s La Viva!”で会場が多いに沸く。続く、アザブエリア3人による“King A Zab”では、黒鉄たま役の秋奈が「にゃー!」と現れる。その斬新かつ贅沢な登場に時折、会場には笑みが溢れていた。ちなみに、この“Let’s La Viva!”と“King A Zab ”は、昨年末に開催された「コミックマーケット 101」の「電音部ブース」にてCDが販売された楽曲である。「電音部のキャラがもし別の世界に生きていたら」というファンタジー作品「電音部Multi-Verse」のものであり、まさかのレア曲の披露に多くの電音部ファンが歓喜の声を上げていた。
「電音部Multi-Verse」のブロックを終えると、ここからはアザブエリアの3人とシブヤエリアの3人によるMCに入る。これまでの電音部のナンバリングLIVEでは、それぞれのエリアごとに曲を披露してノンストップでDJのようにライヴを繋ぎ、最後のブロックにMCの時間が配置されるのが通例だった。しかし、今回は前半の時点で、エリアを跨いだコラボやMCが入るのが新鮮で、いつもとはひと味違う電音部のLIVEを体感することができた。これは電音部として歴史を重ね、メンバー同士の結束が深まったことにもよるのはないかと思っている。
これまでにない和やかなムードのMCを終えると、ステージにはハラジュクエリアの小坂井と大森が現れ、犬吠埼紫杏の楽曲“Player”を熱唱。跳ねるビートにふたりのキュートなボイスが重なり、長谷川のソロバージョンとは違う味わいを見せていた。次に披露されたのは、こちらも犬吠埼紫杏の楽曲“Eat Sleep Dance ”。しかも歌っているのはなんとアキバエリアの天音。エリアも超えたカヴァーに観客は驚かされながらもそのスウィートな歌声に聴き入ってしまった。続いて、アキバエリアからは零奈役の蔀が登場。彼女が歌ったのは、茅野ふたばの楽曲“シンデレラ・マジック・ステージ”。その日不在の堀越の想いを繋ぐような堂々たるステージだった。
こうしてひと味違うブロックのあとはMCへ。ステージに現れたのは、アキバエリアのふたりとハラジュクエリアのふたり、そして………カブキエリアからりむる役のをとは。前回の〈電音部 2nd LIVE -BREAK DOWN-〉から、ハラジュクエリアとは因縁のあるカブキエリアだけに多いにざわつく会場内。そして誰もが思っていた「なんで、いるの?」という疑問がぶつけられると、爆笑が起こっていた。結局カブキとかりむる役のことは忘れて、をとはとして接しようということで話がまとまり、電音部史上最高にカオスなトークゾーンのあとは、りむる役のをとはも含め“ドキドキパリラルラ”を全員で歌唱。このわちゃわちゃとした空間が展開されるのも、ハラジュクエリアの復活があったからであり、これも新章に突入したのだなという感慨があった。個人的には、こういう場にしれっと入り込む、りむるのある種のコミュニケーション能力の高さには本当にビビらされた。
“ドキドキパリラルラ”のカオスなコラボのあとは、アキバの蔀とシブヤの瀬戸 海月役シスター・クレアによるデュエット楽曲“イルシオン”へ。この曲は2022年3月に惜しまれつつも終了してしまった、キャラクターが紡ぐ《音楽》とサウンドドラマによる《物語》がリンクするサウンドプロジェクト『AKROGLAM』のカバー。次元もコンテンツもクロスオーバーした「新たなカルチャーとの遭遇体験」の姿がそこにあった。
ダンサーによるDANCE SHOW CASEを挟み、ライヴのボルテージはさらに上がっていく。シブヤエリアの健屋 花那が“THE ONE”でえげつない量の低音をフロアに叩き込むと、それに呼応するようにアザブエリアが“麻布アウトバーン”、“PRECIOUS NIGHT”、“Sweet Illusion”とラグジュアリーな空間を演出。ダンスミュージックを軸にしながらも、エリアごとのカラーを感じるごちゃまぜ感は、電音部ならではの音楽体験だと思う。
アキバエリアの天音による“トアルトワ”のあとは、青い光に包まれシブヤの瀬戸 海月役シスター・クレアが登場。そこで披露されたのはまだリリースされていない新曲“going…”。彼女の美しい歌声が会場内を包み込み、多くの人々の心をギュッと掴んでいた。次に現れたのは、ハラジュクエリアの小坂井。“teardrop”のような曲を歌っているがよくよく歌詞を聞いてみると、全然印象が違う。この曲は、暗闇から復活した桜乃美々兎の心情を描いた新曲であり、その名も“teardrop 2nd”だという。唐突な新曲2連発に驚かされながらも、これまでの電音部の物語を会場の皆が噛み締めていた。
続くシブヤエリアが“REIGN”の「帝音!シブヤ!」のコール&レスポンスで会場の心をひとつにした後、ついにその時が訪れる。カブキエリアの吉田 凜音(大神 纏役)、SONOTA(安倍-シャクジ-摩耶役)、をとは(りむる役)の3人が満を持して姿を現したのである。赤いレーザーと“Siren”による不穏な空気が会場内に充満し、その悪役としての存在感をまざまざと見せつけていた。
さらにカブキエリアの進撃は続く。をとはが、酒の名前を連呼するなんとも治安の悪いナンバー“焼ケ鮭”でステージを縦横無尽に走り回り、SONOTAが“狐憑キ”のキメ台詞「頭いいフリやめな?w」でカブキの世界にロックする。そして、観客がこの日最もざわついたのは、ここから。シブヤエリア鳳凰火凛の楽曲“CHAMPION GIRL”のイントロが聞こえたかと思いきや、大神 纏役の吉田 凜音が不敵な笑みを浮かべ、新曲“神パラサイト”を披露したのである。“CHAMPION GIRL”を乗っ取るかのような楽曲に、カブキエリアの「違法DJ」としてのスタイルが映し出されていた。
ライヴは、アザブエリアより灰島 銀華役の澁谷 梓希による“Make Some Noise”の熱いステージングを挟み、再びカブキエリアの3人の楽曲“禁言”へ。3人は極上のダークネスな世界観を提示したあと、スクリーンに「fin」の文字を残し、姿を消した。
ここからはBonus Tracksということで、それぞれのエリア楽曲“In my world”(シブヤ)、“Where Is The Love”(アキバ)、“シロプスα”(ハラジュク)と繋ぎ、電音部の楽曲の強さを見せつける。そして最後はアキバエリアのとびきり爽やかなサマーチューン“レモン少女”全員で歌い上げ、〈電音部 3rd LIVE -SOUL EVOLUTION-〉は大団円を迎えた。
最後のMCが終わり、観客は〈電音部 2nd LIVE -BREAK DOWN-〉の経験から身構えていた様子だったが、この日は何事もなく終わった。電音部の新たな展開はこれからの様々なコンテンツを注視しておくしかない、ということだろう。
全ての公演が終わった後、スクリーンにはりむるが登場。そこで告知されたのは、音声創作ソフトCeVIO AI「分散型自律ゴーレム りむる」のリリースだった。これは、「分散型自律ゴーレム りむる」という仮想世界を体験できるツールであり、「りむる」(CV.をとは)の声をベースとし、声質・癖・歌い方を、リアルに再現することのできる音声創作ソフト「CeVIO AI」というものらしい。つまり、このソフトを使えばりむるの声で、楽曲が作れるということであり、楽曲における、りむるの量産がなされるということでもある。
スタート当初から「新たなカルチャーとの遭遇体験」をテーマに掲げてきた電音部だが、これはまたおもしろいことになってきた。電音部は、これからもアキバエリアの単独ライヴなど、様々なイベントを開催する予定だ。これからも、ますます大きな世界を電音部は見せてくれるはずだ。我々はそれを見届けようじゃないか。
〈電音部 3rd LIVE -SOUL EVOLUTION-〉 セットリスト
2023年6月25日(日) 立川ステージガーデン
1.Hyper Bass 2023
2.JUNGLE WAHHOI(Multi-Verse)
3.Let’s La Viva! (Multi-Verse)
4.King A zab (Multi-Verse)
5.Prayer (Multi-Verse)
6.Eat Sleep Dance (Multi-Verse)
7.シンデレラマジックステージ(Multi-Verse)
8.ドキドキパリラルラ(Multi-Verse)
9.イルシオン(Multi-Verse)
10.DANCE SHOW CASE
11.THE ONE
12.麻布アウトバーン
13.PRECIOUS NIGHT
14.Sweet Illusion
15.トアルトワ
16.going…
17.teardrop 2nd
18.REIGN
19.Siren
20.焼ケ鮭
21.狐憑キ
22.神パラサイト
23.Make Some Noise
24.禁言
▼Bonus Tracks
25.In my world
26.Where is the Love
27.シロプスα
28.レモン少女